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商店街と港の歴史的なつながり

<2019年 第64号>

 藤棚地区の商店街に新しいかたちのお店ができはじめてきています。日本一小さいといわれる映画館、は虫類を販売するお店、料理教室やコミュニティ活動のスペースを提供するお店や大都会のようなしゃれた店構えのキャンプ用品を販売するお店など。一方、港には海港都市横浜を昔から支えてきたたくさんの会社があります。かつての横浜船渠の1号ドックでは現在係留している帆船日本丸の大規模修繕工事を進めています。商店街と港の歴史的なつながりを振り返って、次の時代の新しい姿を模索します。


キャンピング用品のお店DEVICE WORKS


新しい息吹を感じる商店街

 安政6 年(1859 年)横浜港の開港で保土ケ谷道沿いの往来が増えて、これがのちに約1 ㎞のショッピングストリートを形成する今の久保町から西前町まで続く商店街となりました。


 明治20 年(1887 年)イギリス人技師H.S.パーマーの設計による近代水道が、相模原から野毛までの44 キロに敷設されました。


 大正2 年(1913 年)路面電車が開通することにより店ができはじめました。当時は農耕地がほとんどで林と畑とたんぼの中に小川のせせらぎが聞こえて、蛙の声がにぎやかだったそうです。人びとは停留場の脇にあった茶屋、鈴木屋の軒先に藤棚があったのでこの辺りを藤棚と呼んだことより、市電の停留場名は藤棚停留場となりました。


 昭和3 年(1928 年)9 月1 日に、字横枕などの町が一緒になって藤棚町が誕生しました。


 昭和19 年(1944 年)4 月1 日に、西区は中区から独立して誕生しました。


 藤棚地区から戸部大通り、岩亀横町周辺には港で働く多くの人びとが住みました。藤棚一番街の「三河屋かみや」の一ノ瀬結花さんは「酒屋ではノーブランドの清酒を調合して量り売り。工員相手の『カブト』と呼ばれる立ち飲みが大層繁盛しました。味噌や醤油、塩も容器持参の量り売りでした」と言います。昭和30 年代には、映画館、パチンコ店や銭湯はいくつもあって惣菜屋も繁盛し、うぐいす嬢による有線放送が流れたり、オート三輪にベニヤの看板を張った宣伝カーが走行していたという様子が目に浮かびます。


黒船を見てきた港

明治8 年(1875 年)郵便汽船三菱会社が三菱製鉄を設立。

明治24 年(1891 年)「有限責任横浜船渠会社」が設立。

明治26 年(1893 年)「有限責任横浜船渠会社」の社名を「横浜船渠株式会社」としました。

明治29 年(1896 年)~明治31 年(1898 年)船舶修理用の第2ドックと第1ドックを建設。

明治43 年(1910 年)3 号ドック(コンクリート製)を建設。


 大正3 年(1914 年)~大正7 年(1918 年)第一次世界大戦の好景気を受けて、従業員の数は横浜船渠3000 人以上、内田造船所2000 人に及びました。


 昭和10 年(1935 年)横浜船渠が、三菱重工業に吸収合併されて三菱重工業株式会社横浜船渠となりました。昭和18 年(1943 年)三菱重工業株式会社横浜造船所と改称して、横浜船渠の名称が消えました。


 昭和27 年では造船関連会社が多く、街にはまだ活気がありました。


ドックヤードガーデン(旧第2ドック)


 岩亀横町(戸部町5 丁目)に「割烹岩亀本店」を構えた内田康夫さんは、「朝は造船所に向かう人たちの下駄や雪駄の音、昼にはボーっという汽笛の音が響き、日常生活に造船所が密着していました」と言います。


 昭和57 年(1982 年)横浜船渠は93 年の歴史に幕を閉じました。高島町交差点から続く東急東横線高架跡に、「みつびしどっく踏切」と書かれた看板のある小さな踏切があります。かつて横浜造船所への入口となっていた旧三菱正門跡です。今では、西区の旧市街と新市街をつなぐ道となっています。


 昭和 58 年(1983 年)跡地は横 浜みなとみらい 21 として再開発されました。藤棚の商店街では「街歩き空き店舗ツアー」が開催されて、新しい店が生れつつあります。すべては歴史に学べといいます。これからも街と港は手を携えていくことでしょう。

≪参照≫「西区大好き!魅力再発見」温故知新魅力アップ事業実行委員会


 桜木町の横浜みなと博物館で、企画展「横浜船渠 ドック物語」が開催されています。

 2 月2 日(土)~3 月24 日(日)休館日は月曜日、開館時間は10 時~17 時。

<学芸員による展示解説>

2 月9 日、3 月2、16 日の11:00、14:00

●企画展 「横浜船渠 ドック物語」

記念講演会『横浜船渠の1,2 号ドック』

3 月3 日(日) 14:00~16:00

日本丸訓練センター

講師:青木祐介氏(横浜都市発展記念館副館長)

申込締切:2 月23 日(土)(必着)

TEL 045-221-0280 FAX 045-221-0277

http://www.nippon-maru.or.jp/


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